消えてゆく職業の周辺

仕事を失うということ(デザイナー戦力外通告)

01:フツーのサラリーマンはごめんだ

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ボクは20代の頃、駆け出しのデザイナーをやっていた。それから30年経った今も、この業界の底辺の方で、なんとかデザイナーで食っている。デザイナーになろうと切望してこの業界に飛び込んだワケではなかった。ただ単純に、フツーのサラリーマンになりたくなかっただけだ。

デザイナーというと、一般的な印象は、ファッション系をイメージする人が多い。その他には、インテリアデザイナープロダクトデザイナー、エディトリアルデザイナー、最近だとゲームデザイナーとかwebデザイナーなんてイメージする人もいるだろう。

初対面の人から『お仕事は?』と聞かれて「グラフィック(印刷物)デザインやってます」って答えると、まあ大体「へえ~」と興味なさそうな微妙な相槌を打たれるのが関の山。その程度の知名度しかない稼業なのかな。けれども日常生活と深く関わっているのは、グラフィックデザインなんだと思っている。何しろこの世の中にあるほとんど全ての印刷物がグラフィックデザインなのだから。

そのGD(グラフィックデザイナー)という職業、キャリアには寿命があるんだと、周囲から刷り込まされてきた。 周囲というのは、職場及び同業者一般のこと指す。大体35歳くらいまでには、GDは、AD(アートディレクター)という名の、さらに上のステージへ昇格し、直接手を動かす制作からは離れ、デザイナーを使い、ディレクションする立場になるべきなんだと、自分自身も思い込んでいた。ボクは、そのことについて特に熟考することなく、そんなもんなんだ、と漫然と20代を過ごす。

実は、職能的に35歳でデザイナー引退説には、なんの根拠もない。 とはいえ、いつまでもデザイナーをやってると、成長が足りないだの、だらしないだのとなんとなく後ろめたい感じがしたものだ。 これはひとえに、業界の悪しき刷り込み効果の賜物だろう。被害妄想かもしれないけど、そうとも言い切れないことも確かにある。なんだか困ったもんだ。 モノ作りのデスクワークは、神経が磨り減ってしまうくらい疲れることもあるけど、結構楽しい。一生デザイナー現役だっていいじゃんか、と思う。ただ問題は、糊口を凌ぐに足る仕事の依頼がいつまで続くのか、ということだろう。

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